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  • 2008.10.16 Thursday
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☆冬のソナタ殺人事件(その2)   11月、毎日、大雪の弘前市で

――弘崎大の教室で、授業の後                        
                    
「三上、いい物やるよ!」
「うん!」
若山君は、さっと美里のカバンに、クッキーとアメを入れると、笑いなが
ら、男同士で機嫌よく、教室を出て行った・・・
                                      
    
 (美里は、光夫の男子寮の部屋を出ると、廊下で、野村先輩に、ホテル
のレストランの手伝いと、ピアノ弾きを頼まれます。美里は、光夫と一緒に
アルバイトに出かける事にしました。野村先輩は、二人を車に乗せて、今
は美里と一緒に、カウンターの中の洗いものをしています・・・・)

「あいつがあっさり来てくれるなんて、信じられないな、お前、あのアマノジャ
クに何て言ったんだ?」(野村)
「急にピアノ弾くように言われて、困っちゃったって」(美里)
「それだけか?」
「うん」
「何であいつ、後輩なのに俺たちの命令きかないんだ。数学科だから、偉い
のか?」
「人間は、皆平等だから、上も下も無いって言うの。俺は男だから、強きをく
じき、弱きを助けるんだって。私、長岡に命令された事ないよ、一度も。男女
差別も絶対しないよ」

「・・それは、そうだが・・福沢諭吉とヤクザ映画のマンマじゃないか・・」
「でも、正論だと思う・・」
「本は本、映画は映画だ。現実の生活とは別の事だ。しょうのない、数学
バカだな」
「そんな事言うなら、帰る!」
 美里はエプロンをほどいた。女子寮1のおてんばだ。口先だけではない。
「悪かったよ。光夫は、いい奴だよ」
「ほんとに?そう思ってくれる?」


「鳥越様、リクエストをどうぞ」
「・・・何々・・ほお・・・今夜はいい曲ばかりだねえ・・・いつもと違って、楽し
みだな・・・ベートーベンにショパンか・・」

  光夫が美里と一緒にピアノの前でお辞儀をすると、会場から笑い声が
起こった。光夫のヘアースタイルは、後ろで一つ縛りで、レースのリボンで
束ねてある。モーツアルトのような、白いヒラヒラのブラウスが、ぴったりと
似合って、中世ドイツの王宮の間の、「フランツ・リスト」そっくりだ。
 下は黒いズボンだが、モーツアルトと同じ仕草で、手を大きく動かしてお
辞儀をしたのだ。これだけで、大拍手。

静かに、切なく、美しく、激しく、哀しいメロディーが、胸に迫ってくる。客た
ちは、食事をする事をすっかり忘れたかのように、熱心に聴きほれていた。

「理事長先生は、クラシック音楽にお詳しいですね」
 同じテーブルの、内科部長が、ゴマをすっている。事務長も調子よく、
「私なんか、さっぱり判りませんよ。クラシックは。アハハハ『冬のソナタ』な
ら、家内がマメに聴いているので、知っていますが、理事長先生は、流石
に奥が深い」

「いやあ、それほどでもないがね、ベートーベンの人気ソナタというのは、
4曲あるんだよ。一番有名なのが、『月光』、それにさっきの『熱情』、その他
に、『悲愴』『告別』、この4つなんだ。『ベートーベン4大ソナタ』といってね」
「はああ、ソナタって、4曲もあるんですか、理事長は、なかなか、お詳しい」

美里がカウンターに戻ろうとする時、
「あのう、これ、使ってください。千円位の安物ですが・・・良かったら」
 さっき、自分の皿のケーキをくれた男性が、美里の手に小さな包みを渡した。
「え?何ですか?」
「韓国ドラマの『ポラリスのネックレス』ですよ。薬品会社のプロパーをしてい
るので、看護婦さんたちに、サービス品で配っているんです、どうぞ、どうぞ」
「あ・・欲しかったんですけど・・・」

――鳥越医院内・・・
午前3時、宿直の内田医師が、部屋の冷蔵庫から、栄養ドリンクを出して
飲むと、口から泡を吹いて、そのまま倒れてしまった。患者のお産が始まる
ので、看護婦が迎えに行くと、内田医師は部屋の床で絶命していた。   
                           
  野村警部は、死体の側にかがみこんで、                  
「・・青酸カリかもしれないな。ドリンクは市販の物か・・・・何だこれは?」 
 死体の側に小さな白いカードが落ちている。                 
 ワープロで打たれた文字だ。                        
  
《OP−13》                             

―寮は、暖房が効いて、真冬なのに暖かい。その夜、二人は、同じ夢を〜

                                      
   
冬のはずなのに、寮の部屋の窓の下は、一面にタンポポの絨毯だった。光
夫は花の中に座って、ハイネの詩集を広げて読んでいる。後ろから、小さな
手が、光夫の両目をふさいだ。

 後ろを振り向くと、Tシャツにミニスカートの美里が、ウフフフ・・と笑って、背

から肩に抱き付いてくる。美里は走り出した。光夫が追いかけていくと、タンポ
ポの中に、美里が座って、一心に、花の冠を作っている。            
                                      
    
光夫が向かいに座ると                            
   
「私、お嫁さんになるの。世界で一番好きな人のお嫁さんになるんだ!」    
「美里、誰のお嫁さんになるんや?」                     
    
「・・卒業したら、私、毎日、長岡のご飯作りたいの・・年を取って、長岡がお爺
さんになっても、ずっと、ずっと、いい?」                  
     
「・・うん・・うん・・・美里、二人で、ずっと、毎日、一緒に居ような・・」  
    
「うん」                                  
    

美里が一本のタンポポを摘んで、光夫の胸ポケットに刺すと、美里は、白い
可愛いドレスに変わった。光夫は、タンポポの冠を、美里の頭に優しく乗せて
やった。夢の中で、光夫が、美里を優しく抱きよせると、おとなしく目を瞑ってい
る。光夫は、額にそっとキスをした。――夢の中で――             
 

しかし、事件から一ヵ月後、今度は、青森市のN病院で、日中、勤務中に、
下山医師が、同じように、栄養ドリンクを飲んだ途端、口から泡を吹き出して倒
れた。青酸カリで即死だ。

 (光夫に、京都の母から、手紙が届いた)
       
                                      
    
《光夫さん、元気に勉強していますか?                    
  
                                      
   
  お父さんは、県会議員でしたが、次期は、地元から国会議員に立候補する
事になりました。こちらは、大忙しです。後援会長さんが、あなたにいい縁談を
持ってきてくれましたよ。地元の銀行の副頭取のお嬢さんで、名前はマリさん
といいます。美人で、淑やかで、聡明な方です。お父さんがすっかり気に入っ
てしまって、大喜びです。マリさんに、あなたのお写真を見ていただきましたが
、気に入ってくれた様子で、選挙の時は、お父さんの選挙カーに乗って、手伝
ってくださるそうです。写真を同封します。                 
                                      
   
弘前は寒いでしょう。毎日雪が降っているそうですね。風邪を引かないように、
体に気を付けてください。あなたが冬休みに帰って来るのを、皆で楽しみに待っ
ています。是非、マリさんに会って下さいね。   母より 》         
   
                                      
   

――いやだ、俺は、美里が好きだ・・・
光夫はため息をついて、写真をろくに見ないで、丸めて、屑篭に投げ捨てた。

その頃、美里は、幼なじみで隣の席の若山君と一緒に小母の料亭に、仲居
のアルバイトに出かけ、行きの車の中で、「お前、おてんばだから、売れ残った
ら、俺がもらってやるよ、ハハハ・・」と、若山君に言われるが、冗談だと思っ
て、うっかり、聞き流していた。

(美里は警部の娘、野村えりに頼まれて)食事中の医師たちの会話をこっ
そりと録音して、光夫と二人で聞いている

「・・・あ、少し巻き戻して・・・ちょっと、ボリューム上げてみて・・・」   
   
                                      
    
――「・・下山医師の遺体の胸に、白いカードが入っていましてねえ・・・」 
――「何ですか?」                             
    
――「確か・・OP27―2とか・・・」                   
    
――「薬品の番号ですかねえ・・」                      
  
――「薬剤師にきいても、検査技師に聞いても、何の事か、さっぱり・・・」 


バックナンバー 2008年


 @バックナンバー1月号 028・いろはに・08・1++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・16
   §2 冬ソナ・夏の香り殺人事件・8

 @バックナンバー2月号 029・いろはに・08・1++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・17
   §2 冬ソナ・夏の香り殺人事件・9

 @バックナンバー3月号 030・いろはに・08・1++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・18
   §2 冬ソナ・夏の香り殺人事件・10

 @バックナンバー4月号 031・いろはに・08・1++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・19
   §2 冬ソナ・夏の香り殺人事件・11

 @バックナンバー5月号 032・いろはに・08・1++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・20
   §2 冬ソナ・夏の香り殺人事件・12

 @バックナンバー6月号 033・いろはに・08・1++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・21
   §2 冬ソナ・夏の香り殺人事件・13

 @バックナンバー7月号 034・いろはに・08・1++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・22
   §2 冬ソナ・夏の香り殺人事件・14

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