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  • 2008.10.16 Thursday
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§1 明智小五郎VS怪人二十面相  第1話「マリアの涙」盗難事件:1

明智小五郎 28歳 名探偵 独身のイケメン・誠実

カオリ 明智の助手
小林君(小5)明智の助手 大臣君(小5)かっちゃん(小5)
織田警部補 恋人真知子
下田警部補 妻信代

大滝氏 ホテル王・大金持ち 若い妻早苗
草田 大滝邸の執事
マジシャン  
ピエロ

怪人二十面相 変装して現れる大盗賊 殺人はしない主義

    1

 夕映えが洋館のステンドグラスを通して、サロンが紫色に染まり、オペラ・トゥー
ランドットのアリアが流麗に広間に溢れている。らせん階段から、黒のビロードのド
レスをまとった、艶やかな黒トカゲ夫人が、ワイングラスを片手に優しく微笑みかけ
ながら、階下の明智小五郎を見下ろしている。二人の視線がからみ合って、明智小五
郎が手を差し伸べると、夫人はゆっくりと降りて近づいてくる・・・

「先生、明智先生、お客様です、起きて下さい!先生!」
 カオリの声で、明智小五郎は気持ちのよい眠りから、現実に引き戻された。――い
い夢だったのに・・・
「ん?」
「先生、しっかりしてください。お客様ですよ!」
「そうか・・お通しして」
「はい、はい、先生、しょうがないなあ、襟元・・髪も・・」
 カオリはソファーから起き上がった明智青年のくしゃくしゃになった、えり元と髪
の毛を素早く整えてから、急いで客を明智の部屋に通した。
 明智はまだ夢見ごこちで少しぼーっとしている。――美しかったなあ・・黒トカゲ
夫人は・・
 
 既製の背広と糊のピシッと掛った白いYシャツに短髪の、いかにも生真面目・几帳
面なやせた初老の紳士は、折り目正しく、明智に深々と頭を下げ、勧められるままに、
ソファーに腰を下ろすと、青い顔で、明智の言葉を緊張気味に待ち構えている。

 カオリが直にコーヒーを運んできた。
「さ、熱いうちにどうぞ」
「は、はい、先生」

 明智に優しく砂糖を勧められて、二杯ほど入れると、その紳士は、少し、砂糖をこ
ぼして、あわてている。カオリが直に気が付いて、ニコニコして、清潔なグリーンの
ダスターで拭きとって、別室に下がった。

「あ、申し訳ございません、とんだ粗相を」
「お気になさらずに、今日はどんなご用件ですか?」

「はい、私は、こういうものでございます。本日は、私の仕えております旦那様から
のお言いつけでございまして」

 紳士は、ポケットから自分の名刺を取り出して明智に渡し、小さな黒い革の鞄のチ
ャックを開けると、恐ろしい怪物にでも遭遇したように不安そうに、震える手で、一
通の手紙を取り出して、明智に渡した。

 名刺には
 《大滝邸執事
         草田 克夫
                    電話番号内線++++》とある。

「大滝さんというのは、あの大滝氏ですか」
「はい、さようでございます。先日、二日前の事でございますが、私共の旦那様の処
に、このような恐ろしい予告状が来まして」

 大滝氏というのは、以前は有名なホテルチェーンの会長だったのだが、ここ最近、
60歳を過ぎてからは、会長職を勇退し、奥多摩の広い屋敷で、孫娘のような若い美
しい妻と一緒に、悠悠自適の生活を楽しんでいるという、有名な資産家である。

「この手紙、拝見してもよろしいですか」
「はい、旦那様が、是非、明智先生に読んでいただきたいと申しましておりまして」

「それでは、失礼して」
 明智は、開封された手紙を取り出して、読み始めた。

《大滝総一郎殿
       25日午後12時
         貴邸に「マリアの涙」を頂きに参上する
                            怪人二十面相》

「・・フーン、明日の真夜中か・・この、『マリアの涙』というのは、どういった
?」
「はい、それは、先週東京のオークションに掛けられましたばかりの、かの大富豪オ
ナシス家の遺産の中の、宝飾品の一つでございまして、生前、オナシス様が、最愛の
恋人のオペラ歌手の・・マリアなんとか・・」

「ああ、マリア・カラスの為にですね」
「はい、はい、確か、そのようなお名前でございました。王妃様が身につけられるよ
うな、それはそれは、まばゆいほどの、立派なネックレスでございます」

「それは、15カラットの赤いダイヤの、マリア・カラスが、オペラ『椿姫』の舞台
で身につけていた筈だったな・・カオリ君、ちょっと、マリア・カラスの、写真か何
か・・ここに持って来てくれないか、オペラ歌手の」

「はあい、先生、ちょっとお待ちください」
 執事は目をしばたたきながら、申しわけ無さそうに、
「私、オペラの方は、何分、不調法でして、申し訳ございません」
「私も、最近はあまり、オペラには出かけていないのですが、少し前にマリア・カラ
スの伝記映画のビデオを観たんですよ。カオリ君、あったかな?」
 
 カオリが、マリア・カラスの写真集つきのCDジャケットを持って、部屋に入って
来た。
「先生、これでいいんですか?」
「あ、これだよ。確かオペラ『椿姫』の・・さて・・あ、ありました。草田さん、ご
依頼の件は、この写真のネックレスでしょうか」
「あ、はい、はい、これでございます」

 白黒の舞台写真だが、確かに、マリア・カラスの胸に、素晴らしいダイヤと思われ
るネックレスが輝いている・・・・・・・・・・・・・

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  • 2008.10.16 Thursday
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