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  • 2008.10.16 Thursday
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§1 怪人二十面相VS明智小五郎 第1話「マリアの涙」


◆創刊号:名場面◆ 

   ホテル王大滝氏の邸に、恐怖の予告状が!!

   「貴殿の宝『マリアの涙』を頂戴する。怪人二十面相」 

  さっそく、大滝氏は、執事の草田に命じて、明智探偵の事務所へ・・

   「マリアの涙」とは、かつて、海運王「オナシス」が、最愛の女性で、
  オペラ歌手「マリア・カラス」のために、ぜいをこらして造らせた、素晴
  らしく、美しい、首飾りである。

   「レプリカを使ったら?」怪人二十面相は、明日の夜12時に、大滝氏
  の美貌の若妻・早苗夫人の誕生パーティーに現れる。その時までに、細か
  い細工のレプリカは造れない。「マリアの涙」は、入手したばかりだから
  盗難保険も掛けられていなかった。 さて、明智探偵は、どうする?「マ
  リアの涙」は、怪人二十面相の手に落ちるのか!!

       メールマガジン|江戸川心歩全集|ヒミコの悪運退散

連載第1回 §2 冬のソナタ殺人事件(本編)


 ◆名場面◆ 

   北国に降り積もる白い雪 ♪ 

  冬の夜空に、ベートーベン「4大ソナタ」のピアノの音が、荘厳に鳴り響く〜 
  
   野村警部は頭を抱えていた。1人、また、1人と、医師たちが死体になっ
 ていく。死体の側には、謎の文字が書かれた、白いカードが・・・

   ☆天才大学生「名探偵・光夫」、さっそうと、新登場☆

    殺人事件を縦糸に、純情な光夫と、明るい美里の、二人の純愛を横糸に、美しく
   織り成す、せつなく、悲しい、想い・・・


        メールマガジン|江戸川心歩全集|ヒミコの悪運退散

§1 明智小五郎シリーズ

明智小五郎 28歳独身  182cm・白薔薇のような美男子
      頭脳明晰・スポーツ万能・近眼・花粉症

小林少年  小5 勇気は満点・成績はごめんなさ〜い
カオリ   22歳 明智の助手 少々美人・明智に弱い
織田警部補 33歳・美男・スポーツ万能・風呂嫌い
下田警部補 33歳・小太りで優しい・怪力だが、怖がり

黒蜥蜴 年齢不詳 美人で色っぽい・イリュージョンの達人
怪人二十面相 32歳 182cm・変装して、宝物を盗み出す       
            明智に対しては、激しい憎しみがある。



§2 冬のソナタ殺人シリーズ


長岡光夫 19歳 数学と♪ピアノの天才・寮生活・大学生
     京都生まれ・恥ずかしがり屋・気が強い・☆名探偵!

三上美里 19歳 チビでメガネ・おてんば・寮生・大学生
     光夫のGF・明るいアルバイト学生・青森生まれ

若山君  19歳 大学一の美男子 美里の幼ななじみ

野村警部 55歳・細身でスマート・メガネ・気前がいい
野村誠  22歳・バイト学生・寮生・美男子・警部の息子
野村えり 20歳・誠の妹・美里の親友・夢二風の美人


バックナンバー 2005年


◇チャリティー配信 毎月、第1・3土曜日配信(まぐまぐプレミアム)

 @バックナンバー10月号 001・いろはに・05・10++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵・1話「マリアの涙」 
   §2 冬のソナタ殺人事件(本編)1〜4章

 @バックナンバー11月号 002・いろはに・05・11++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 2話「妖怪クモ女」
   §2 冬のソナタ殺人事件(本編)5章〜終章 
   §2−2 雪だるま怪事件(前編)

 @バックナンバー12月号 003・いろはに・05・12++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 3話「蝶々夫人」
   §2−冬ソナ・雪だるま怪事件(後編)
   §2−冬ソナ・7人のキューピー人形怪事件(前編)





バックナンバー 2006年


 @バックナンバー1月号 004・いろはに・06・01++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 4話名画「鹿鳴館」
   §2−冬ソナ・7人のキューピー人形怪事件(中編)

 @バックナンバー2月号 005・いろはに・06・02++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 5話「ナポレオンの秘宝」前編
   §2−冬ソナ・7人のキューピー人形怪事件(後編)
   §2−冬ソナ・秋の童話殺人事件−1

 @バックナンバー3月号 006・いろはに・06・03++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 5話「ナポレオンの秘宝」後編
   §2−冬ソナ・秋の童話殺人事件−2

 @バックナンバー4月号 007・いろはに・06・04++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 6話「妖刀・霧雨丸」前編
   §2−冬ソナ・秋の童話殺人事件−3

 @バックナンバー5月号 008・いろはに・06・05++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 6話「妖刀・霧雨丸」中編
   §2−冬ソナ・秋の童話殺人事件−4

 @バックナンバー6月号 009・いろはに・06・06++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 6話「妖刀・霧雨丸」完結編
   §1−2 黒蜥蜴VS明智探偵 7話「メズーザの首」・1
   §2 冬ソナ・秋の童話殺人事件−5

 @バックナンバー7月号 010・いろはに・06・07++
   §1 黒トカゲVS明智探偵 7話「メズーザの首」・2
   §2 冬ソナ・秋の童話殺人事件−6

 @バックナンバー8月号 011・いろはに・06・08++
   §1 黒トカゲVS明智探偵 7話「メズーザの首」・3
   §2 冬ソナ・秋の童話殺人事件−7

 @バックナンバー9月号 012・いろはに・06・09++
   §1 黒トカゲVS明智探偵 7話「メズーザの首」完結編
   §2 冬ソナ・秋の童話殺人事件−8

 @バックナンバー10月号 013・いろはに・06・10++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・1
   §2 冬ソナ・秋の童話殺人事件−9

 @バックナンバー11月号 014・いろはに・06・11++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・2
   §2 冬ソナ・秋の童話殺人事件−10

 @バックナンバー12月号 015・いろはに・06・12++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・3
   §2 冬ソナ・秋の童話殺人事件−11


バックナンバー 2007年

 @バックナンバー1月号 016・いろはに・07・1++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・4
   §2 冬ソナ・秋の童話殺人事件−12

 @バックナンバー2月号 017・いろはに・07・2++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・5
   §2 冬ソナ・秋の童話殺人事件−13

 @バックナンバー3月号 018・いろはに・07・3++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・6
   §2 冬ソナ・炎のレクイエム殺人事件−1

 @バックナンバー4月号 019・いろはに・07・4++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・7
   §2 冬ソナ・炎のレクイエム殺人事件−2

 @バックナンバー5月号 020・いろはに・07・5++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・8
   §2 冬ソナ・炎のレクイエム殺人事件−最終章

 @バックナンバー6月号 021・いろはに・07・6++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・9
   §2 冬ソナ・夏の香り殺人事件・1

 @バックナンバー7月号 022・いろはに・07・7++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・10
   §2 冬ソナ・夏の香り殺人事件・2

 @バックナンバー8月号 023・いろはに・07・8++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・11
   §2 冬ソナ・夏の香り殺人事件・3


 @バックナンバー9月号 012・いろはに・06・09++
   §1 黒トカゲVS明智探偵 7話「メズーザの首」完結編
   §2 冬ソナ・秋の童話殺人事件−8

 @バックナンバー10月号 013・いろはに・06・10++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・1
   §2 冬ソナ・秋の童話殺人事件−9

 @バックナンバー11月号 014・いろはに・06・11++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・2
   §2 冬ソナ・秋の童話殺人事件−10

 @バックナンバー12月号 015・いろはに・06・12++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・3
   §2 冬ソナ・秋の童話殺人事件−11

 @バックナンバー1月号 016・いろはに・07・1++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・4
   §2 冬ソナ・秋の童話殺人事件−12

 @バックナンバー2月号 017・いろはに・07・2++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・5
   §2 冬ソナ・秋の童話殺人事件−13

 @バックナンバー3月号 018・いろはに・07・3++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・6
   §2 冬ソナ・炎のレクイエム殺人事件−1

 @バックナンバー4月号 019・いろはに・07・4++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・7
   §2 冬ソナ・炎のレクイエム殺人事件−2

 @バックナンバー5月号 020・いろはに・07・5++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・8
   §2 冬ソナ・炎のレクイエム殺人事件−最終章

 @バックナンバー6月号 021・いろはに・07・6++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・9
   §2 冬ソナ・夏の香り殺人事件・1

 @バックナンバー7月号 022・いろはに・07・7++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・10
   §2 冬ソナ・夏の香り殺人事件・2

 @バックナンバー8月号 023・いろはに・07・8++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・11
   §2 冬ソナ・夏の香り殺人事件・3

 @バックナンバー9月号 024・いろはに・07・9++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・12
   §2 冬ソナ・夏の香り殺人事件・4

 @バックナンバー10月号 025・いろはに・07・10++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・13
   §2 冬ソナ・夏の香り殺人事件・5

 @バックナンバー11月号 026・いろはに・07・11++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・14
   §2 冬ソナ・夏の香り殺人事件・6

@バックナンバー12月号 027・いろはに・07・12++
   §1 怪人二十面相VS明智探偵 8話「G線上のアリア」・15
   §2 冬ソナ・夏の香り殺人事件・7

§1 明智小五郎VS怪人二十面相  第1話「マリアの涙」盗難事件:1

明智小五郎 28歳 名探偵 独身のイケメン・誠実

カオリ 明智の助手
小林君(小5)明智の助手 大臣君(小5)かっちゃん(小5)
織田警部補 恋人真知子
下田警部補 妻信代

大滝氏 ホテル王・大金持ち 若い妻早苗
草田 大滝邸の執事
マジシャン  
ピエロ

怪人二十面相 変装して現れる大盗賊 殺人はしない主義

    1

 夕映えが洋館のステンドグラスを通して、サロンが紫色に染まり、オペラ・トゥー
ランドットのアリアが流麗に広間に溢れている。らせん階段から、黒のビロードのド
レスをまとった、艶やかな黒トカゲ夫人が、ワイングラスを片手に優しく微笑みかけ
ながら、階下の明智小五郎を見下ろしている。二人の視線がからみ合って、明智小五
郎が手を差し伸べると、夫人はゆっくりと降りて近づいてくる・・・

「先生、明智先生、お客様です、起きて下さい!先生!」
 カオリの声で、明智小五郎は気持ちのよい眠りから、現実に引き戻された。――い
い夢だったのに・・・
「ん?」
「先生、しっかりしてください。お客様ですよ!」
「そうか・・お通しして」
「はい、はい、先生、しょうがないなあ、襟元・・髪も・・」
 カオリはソファーから起き上がった明智青年のくしゃくしゃになった、えり元と髪
の毛を素早く整えてから、急いで客を明智の部屋に通した。
 明智はまだ夢見ごこちで少しぼーっとしている。――美しかったなあ・・黒トカゲ
夫人は・・
 
 既製の背広と糊のピシッと掛った白いYシャツに短髪の、いかにも生真面目・几帳
面なやせた初老の紳士は、折り目正しく、明智に深々と頭を下げ、勧められるままに、
ソファーに腰を下ろすと、青い顔で、明智の言葉を緊張気味に待ち構えている。

 カオリが直にコーヒーを運んできた。
「さ、熱いうちにどうぞ」
「は、はい、先生」

 明智に優しく砂糖を勧められて、二杯ほど入れると、その紳士は、少し、砂糖をこ
ぼして、あわてている。カオリが直に気が付いて、ニコニコして、清潔なグリーンの
ダスターで拭きとって、別室に下がった。

「あ、申し訳ございません、とんだ粗相を」
「お気になさらずに、今日はどんなご用件ですか?」

「はい、私は、こういうものでございます。本日は、私の仕えております旦那様から
のお言いつけでございまして」

 紳士は、ポケットから自分の名刺を取り出して明智に渡し、小さな黒い革の鞄のチ
ャックを開けると、恐ろしい怪物にでも遭遇したように不安そうに、震える手で、一
通の手紙を取り出して、明智に渡した。

 名刺には
 《大滝邸執事
         草田 克夫
                    電話番号内線++++》とある。

「大滝さんというのは、あの大滝氏ですか」
「はい、さようでございます。先日、二日前の事でございますが、私共の旦那様の処
に、このような恐ろしい予告状が来まして」

 大滝氏というのは、以前は有名なホテルチェーンの会長だったのだが、ここ最近、
60歳を過ぎてからは、会長職を勇退し、奥多摩の広い屋敷で、孫娘のような若い美
しい妻と一緒に、悠悠自適の生活を楽しんでいるという、有名な資産家である。

「この手紙、拝見してもよろしいですか」
「はい、旦那様が、是非、明智先生に読んでいただきたいと申しましておりまして」

「それでは、失礼して」
 明智は、開封された手紙を取り出して、読み始めた。

《大滝総一郎殿
       25日午後12時
         貴邸に「マリアの涙」を頂きに参上する
                            怪人二十面相》

「・・フーン、明日の真夜中か・・この、『マリアの涙』というのは、どういった
?」
「はい、それは、先週東京のオークションに掛けられましたばかりの、かの大富豪オ
ナシス家の遺産の中の、宝飾品の一つでございまして、生前、オナシス様が、最愛の
恋人のオペラ歌手の・・マリアなんとか・・」

「ああ、マリア・カラスの為にですね」
「はい、はい、確か、そのようなお名前でございました。王妃様が身につけられるよ
うな、それはそれは、まばゆいほどの、立派なネックレスでございます」

「それは、15カラットの赤いダイヤの、マリア・カラスが、オペラ『椿姫』の舞台
で身につけていた筈だったな・・カオリ君、ちょっと、マリア・カラスの、写真か何
か・・ここに持って来てくれないか、オペラ歌手の」

「はあい、先生、ちょっとお待ちください」
 執事は目をしばたたきながら、申しわけ無さそうに、
「私、オペラの方は、何分、不調法でして、申し訳ございません」
「私も、最近はあまり、オペラには出かけていないのですが、少し前にマリア・カラ
スの伝記映画のビデオを観たんですよ。カオリ君、あったかな?」
 
 カオリが、マリア・カラスの写真集つきのCDジャケットを持って、部屋に入って
来た。
「先生、これでいいんですか?」
「あ、これだよ。確かオペラ『椿姫』の・・さて・・あ、ありました。草田さん、ご
依頼の件は、この写真のネックレスでしょうか」
「あ、はい、はい、これでございます」

 白黒の舞台写真だが、確かに、マリア・カラスの胸に、素晴らしいダイヤと思われ
るネックレスが輝いている・・・・・・・・・・・・・

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§2「冬のソナタ」殺人事件(本編:1)

  
                            江戸川心歩 作
◇弘崎大学寮生
長岡光夫 2年生 天才探偵 純情 京都生まれ 
三上美里 2年生 光夫のガールフレンド 青森生まれ

野村誠  4年生 フランス製のめがねが似合う、色白ハンサム 
野村えり(美人) 父親 野村警部 野村誠の妹・美里の友達
美里の友達 2年生 平井ルリ子 同 白石夕実
光夫の友達 2年生 坂下・原口

若山君 2年生 下宿生 美里の幼なじみ 大学一の美男子

鳥越院長 大病院の医師 鳥越夫人 長男 秀一
内田医師 鳥越医院の勤務医

浜田 薬品プロパー
佳奈美お姉さん ルリ子の従姉妹


連載第一回

    第1楽章 

 11月。早朝。青森県弘前市。雪が積もって、ほとんどの女子寮生たちは、マフラ
ーを首に巻いて、急ぎ足で大学に向かっている。学寮から大学までの通学道の周りに
は、りんご畑がのどかに広がり、遠くには雪を被った「津軽富士・岩木山」が、冬晴
れの青空に、美しくそびえている。

「美里、もっと早く起きなきゃだめでしょ」
「ごめんね・・」
「一時間目が英語だといつもこれなんだから、バカネ、なかなか起きないんだから」
とルリ
「ア〜ア自転車だとすぐなんだけどな・・歩くのめんどうくさいよね」と夕実
「つるんつるんよ、アイスバーンだもの」
「アハハハ・・先輩、転んだ!!」と美里

「先輩、意地悪だから、イエス様の罰よ」
 ロザリオを下げているルリ子は、キリスト教だ。

 後ろから男子寮生たち4人が自転車で・・その中の一台が美里の前に止まった。
「長岡(光夫)、おはよう!!」(美里)
「光夫ちゃん、おはよう」(ルリ・夕実)
「フフ・・三上(美里)、乗るか?」
「駄目、危ないでしょ、光夫ちゃん」とルリ
「ううん・・・」(美里)
「どうするんや?」
「やっぱり歩いていく。怖いから」
「大丈夫やって」
 
 先の方を走って行った、光夫の同級生の乗った自転車が、思い切りズデーンと転が
った。光夫が心配して、自転車に乗って追いかけて走ると、自分までズデーンと転ん
でしまった。アイスバーンだから、打った腰が、かなり痛いのだが・・自分が一言で
も、「痛い」と言えば、美里は泣き出すに決まっている。光夫は、ぐっと奥歯をかみ
しめた。

 ルリと夕実は大笑い。美里は急いで、光夫の側に走っていった。
「長岡(光夫)、大丈夫?」
「・・・ああ・・・」
 光夫は、やっと起き上がって、自転車を起こしている。
「ね、歩いて行こうよ」
「そうやね」
 光夫は自転車を引いたまま、よろよろと美里と歩き始めた。

 ルリと夕実が笑ったまま、側に来た。
「光夫ちゃん、大丈夫?痛かったでしょ」
「・・いや、大丈夫や」

 美里は笑っている二人を、きっとにらみつけた。
津軽美人(美人だが少々ダサイ)のルリは、クスクス笑いながら歩いている。たれ目
の夕実は、虫歯の口を開けて、ころころと笑う。

「・・長岡、痛いんでしょ?」
「俺は大丈夫やって・・坂下、大丈夫かな」
 先に転んだ光夫の友達も、他の女生徒たちから笑われているのに気が付いて、3人
で自転車を引きながら、歩き始めた。今朝は幸い雪は降っていない。
「長岡・・ね・・痛い?」
「大丈夫や・・俺より危ないのは、三上の英語やろ。ちゃんと予習したんか?」
「・・・・」(美里)

「夕べ何してたんや?」
「勉強はしたよ。心理学と数学。長岡もやってたよね、数学。」
「ああ、数学の後は?」
「本読んでた。『ラーマーヤナ』」
「それ、面白いやろ」
「うん!」
「本読むの、少し減らして、ちゃんと英語やらないと、留年するぞ」と光夫
「私、若く見えるから・・」
「バカ!何言ってるんや!」
 
 後ろから、自動車通学の学生の車が通り過ぎた。助手席に、美人の女の子を乗せて
いる。
「・・・いいなあ・・」と夕実
「でも、危ないわよ。医学部の男子って、怖いから」とルリ

「医学部やなくても、知らない男生徒の車には乗らないほうがいいよ」と光夫
「・・長岡、大丈夫・・・」
 美里は、長岡の心配ばかりしている。
「美里、お嫁さんみたいね、フフフ・・」とルリ
 
 二人は、少し赤くなった。校門の前に着くと、車の中から美里たちと同じ2年の野
村えりが、華やかに笑って、兄が運転する車の助手席から降りてきた。この兄妹も同
じ学寮に住んでいる。美里とは同じ高校で同級生だ。兄妹揃って、スマートな美男美
女だ。
 
「弘崎大学教養学部」4人の女の子たちは、農学部の2年生。長岡たち男子は理学
部数学科2年。数学科は学内でトップクラスの天才集団で、女の子と話をする習慣は
無いのだが・・光夫だけは気さくで愛嬌がいい。美里は体が小さく童顔で、不二家の
店先のペコちゃん人形にメガネをかけた顔だ・・女子寮1のおてんばなので、彼らに
言わせると、まだお子様扱いだ。皆、女子寮と男子寮のメンバーで、建物は男女別々
だが、食堂でつながっている。どちらの寮も5階建てで、男女それぞれ、220名、
総勢440名の寮生たちが、仲良く生活している。寮の個室は全て二人部屋だ。

・・・4ヶ月前の7月
 美里は携帯電話が鳴って、どきりとした。

「もしもし、母さんなんかあったの?」
「あ、姉ちゃん、母さん、今日は、調子がいいって、今、病院。帰るって言ったら、
 姉ちゃんの声聞きたいからって、替るね」

 美里の母親・菊枝は体が弱く、美里が高校生の頃から、入退院を繰り返している。
「美里、夏休み、帰ってくるの?私、もうすぐ退院だから」
「こっちで、バイト半分、勉強半分かな」
「何だ、そうなの」
「お盆には、少しは帰れるから・・」
「父さん、ボーナス出たから、何か足りない物はないの?」
「姉ちゃん、昨日、バッチャ(祖母)、入院したから」
「母さん、いいって、バイト代入るから」
「美里、元気みたいだね、電話代、もったいないから、切るよ。携帯は高くて」
「うん、じゃ・・」
 美里は、ふーっとため息をついた。今夜は暑苦しい夜だ。

 美里の部屋の開いた窓から、見事なピアノの演奏が聴こえてきた。
「あ、『月光』・・わあ・・わあ・・・・」
 美里は、夢中で、5階の部屋から、階段を一気に走って降りた。ピアノの音が、
段々大きく響いてくる・・荘厳な、月の光の波が、ぐいぐいと胸の中に押し寄せてく
る・・・

 そのまま走って、食堂に駆けて行って、ピアノの前の長い木の椅子の隣に、いき
なり座った。黒い長髪で、無精ヒゲのやせた男の生徒が、熱心に弾いている。
 
 曲が終って、美里は大声で
「わあい!!わあい!!」
 拍手をすると、いきなり大声で怒鳴られた!
「バカ!女はバカだから嫌いや!」
 
 その男生徒は、乱暴に、バラバラグチャグチャと、リストの「愛の夢」を弾いた。
・・・ガチャガチャだな・・・ロマン溢れるようにさ・・優しく弾いたらいいのに・・

 弾き終えて、美里の顔を見て、小馬鹿にしたように、フフフ・・と笑っている。
「リストだ。私もピアノ習っていたんだよ。『カンパネラ』も聴きたい!」

 きつい目で鼻の高い、西洋人みたいな顔の男生徒は、急ににっこりして、「そうカ
ア」と、今度は上機嫌で「カンパネラ」を弾いてくれた。美里は、又、大拍手。

「私、これ(月光ソナタの楽譜)練習してるんだけど・・左の指が、痛いの・・」
 男生徒は、美里の小さな手を見て・・

・・・これは・・この娘は、生まれつき手が小さくて、ピアノを弾くのが大好きなの
に、指が届かなくて弾けないんや・・可哀相に・・何か言ってやらなきゃ・・・

 男生徒は、音譜を見ながら指して
「・・指が痛いのはここと、ここやろ」
「うん、うん」
「下の音、外して弾く。和音を1オクターブ縮めるとか、痛かったら、無理に指を伸
ばして弾かないんや」

「・・それはわかってるけど・・だって、駄目でしょ、そんなの」
「楽譜どおりに弾くという決まりはない」
「ええ?」
「音楽って、音を楽しむっていう字やろ。痛い思いをしてまで弾く事はない」
「・・そうなの・・・」

 男生徒は、美里の顔を見て笑って、
「そうや、音楽を楽しむんや!」
「・・・へええ・・・」

「本好きか?」
「うん、大好き!」
「読んでしまった本で面白いのがあるよ。読むか?」
「うん!うん!」
「俺は、長岡光夫。俺の家は京都なんや。214号室や」
「私、三上美里。青森。農学部2年なんだ」
「なんや、フフフ・・俺も2年や」
 
 二人は、意気投合して話し始めた。二人とも、午後の同じ時間に、ラジオのFM放
送で、クラシック音楽を聴いている。女子寮の個室に男生徒は入れないので、午後暇
な時に、美里が長岡の部屋に遊びに行く事になった。

 光夫が笑って行ってしまった途端に、男子寮の生徒がピアノの側に来た。
「あれ、長岡って、凄いんだ! 数学科でさあ、上級生より凄い出来るんだ!」
「・・へええ・・」
 
・ ・・・・・・・・・中略・・・・・・・・・

 部屋に戻ってから、光夫は

・・・ああ、びっくりした。いきなり、俺の隣にどんと座って・・あの娘、恥ずかし
そうな様子がないな、まだ、子供なんやろ。俺、女の子とくっ付いて話をするなんて、
初めてや。女の子って、いい匂いするんやな・・きれいな声やったしい・・・うぐい
すみたいや。

 人一倍、音感のいい光夫は、寮の食堂で、他の男生徒が女の子の顔をながめている
時に、顔よりも、声のいい娘が気になっていた。

 次の日の午後、美里は、光夫の部屋に初めて遊びに行った。女子寮の癖で、部屋の
戸を閉めて入っていくと、光夫が急いで部屋の戸を、大きく開けた。うれしげに、少
しはにかんで、
「女の子が来たら、部屋の戸を開けておくのが、男子寮の決まりなんや」
と教えてくれた。

・・・ここなら、安全だ!この人は私を大切にしてくれている・・・
 美里はうれしくなった。

 それから、一週間に一度位、明るい時間に美里は光夫の部屋で、3時間ほど、一緒
にFM放送を聴いて過している。光夫がいない時も、自分の部屋のように、光夫と同
室の農学部の先輩に本を借りたり・・光夫の3人の同級生たちと音楽を聴いて、のん
びりとくつろいでいた。
 

 質実剛健、バンカラな光夫は、汚くて、殺風景な部屋だ。本は腐るほど積んである。
光夫は部屋で茶も酒も飲まずに勉強している。光夫は片付けや掃除は苦手らしい。一
言で言うと、光夫の部屋は「花見後の公園」だ。

 正反対に、美里の部屋は、自分で布を買ってきて縫った、フリルたっぷりの花模様
のベッドカバーが可愛い。赤い薔薇の模様の白いティーカップ、紅茶やコーヒー・ウ
ーロン茶、電気ポット、陶器のディナーベル人形など、バイトで買った愛用品が・・
・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・中略・・・・・・・・・・・・・・・

第2楽章

 時間を冬の朝に戻そう。

 朝、教室に入ると、美里の隣の席に、韓国スター顔負けの、超ハンサムな長身の男
生徒がなれなれしく座った。

「三上、おはよう!」
「ワカ、おはよう!」(美里は大声で)

 通称「弘大の若様」全ての女生徒は、緊張して彼を小声で「若山さん」と呼んでい
るのだが、おてんばの美里だけは平気で呼び捨てだ。
 彼は美里の幼ななじみ・・・・・・・・

  
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§1 怪人二十面相VS明智小五郎 (第1話・マリアの涙2)


ああッ 怪人二十面相だあ!!

∞前回までのあらすじ∞                          
 
  「貴殿の宝、『マリアの涙』を頂戴する 怪人二十面相」!!       
     

ホテル王、大滝氏の元に、恐怖の予告状が! 怪人二十面相は、深夜24時、大滝早夫人の、24歳の誕生パーティーの会場に・・・当夜、パーティー会場では、明智探偵と織田警部補、下田警部補が潜入して、二十面相を待ち伏せていた。助手のカオリ、織田の恋人の真知子、メイドに変装した、下田の妻の信代・・・時刻は12時に近づいてる・・変装の達人・怪人二十面相!!一体この中の誰が??・・・助手の小林少年(小5)は、わくわくして、待ち構えている・・・(時間がなくて、首飾りのレプリカは、作れなかった、さあ、どうなる??)
    

 さて、今日の名場面を・・・・・・

 今夜のカオリは、とても清純で可愛い。明智はカオリと恋人のフリをして、肩を抱いて、庭に出てみた。仕事中だが、カオリは少し、ドキドキした。外に出ると、誰もいない。

  明智は真剣な表情で・・・・中略・・・・・・・

・・・・11時50分、音楽が止んで、サロンの照明が薄暗くなった。二人のメードがワゴンに乗せた大きなバースディーケーキを運んできた。ケーキの上で、24本のろうそくが、キラキラと光って揺れている。その後から、ボーイ姿の下田警部補に付き添われて、草田が、ネックレスの入った小箱を持ってきた。

・・!突然、車椅子の老人が立ち上がって、ネックレスの箱に手を伸ばした。大滝氏はすぐに箱のふたをぱちんと閉め、明智が箱をつかんだ。
                       
 かっちゃんが、ガブッと老人の手に噛み付いた。老人は痛みに顔をゆがめて、かっちゃんを殴りつけ、手を振り解いて、左手で拳銃を構え、早苗夫人の腰を抱いて、夫人ののど元に拳銃を突きつけた。                       
            
 女性客たちが                               
    
「キャー!!」と悲鳴を上げ、織田と下田が二人の側に来たが、手出しが出来ない。
    
    「フフフフ・・動くな!動くと撃つぞ!」                   
    
 怪人二十面相が地獄の底から響いてくるような、低い、はっきりした声で言った。
    
 早苗夫人は、青白い顔でふるえている・・・・・中略・・・・・・

 広間の中では、真っ青になっている人たちの真ん中で、怪人二十面相と明智が、にらみ合って立っていた。

 二十面相が、早苗夫人の細い腰を抱いて、拳銃を前に出すと、客たちが通り道を開け た。そのまま、二十面相は、早苗夫人の腰を抱いたまま、らせん階段を登り始め、明智と織田と下田がその後をゆっくりと追っていく。階段の踊り場で、    
        
  「怪人二十面相、早苗さんを離せ!離すんだ!」 ・・・・中略・・・・・    
                                      
                  
 「フフフフ・・・・明智、先に箱をここに置いて、階段を降りろ。言うとおりにしな
いと、早苗さんの命は無い・・・・・・中略・・・・・・・「ク、クソオ!」・・・中略・・

「明智先生、二十面相の言うとおりにしてください、早苗の命にはかえられまん」・・・中略・・・・


 怪人二十面相は、高窓を開けると、                     
       
「フフフフ・・・フフフフ・・・ハハハハ・・」                
      
と高らかに笑い声を立てて、黒いこうもりのように、さっと窓から・・・・・後を追いかけて、窓から飛び降りようとすると、高すぎて無理だ。              
          

「どういう事だ?」                             
    
「おい、走っていくぞ」                           
    
「仕方ねえ、外に廻るか」                         
 なぜか、織田の車はパンクして、走らない。
 すぐに下田の車に乗り換えたが、これもまた、パンクしている。         
          
 織田はすっかり頭の中が煮えたぎっている。                 
    
 「クソオ!!二十面相の野郎!」                       
    
 車の窓に、明智が顔を出した。                       
    
「・・・やられたね。さ、二人とも、屋敷の中に戻って、ハハハハ・・・・・・」 
               
「こんな時に、戻れるか!」(織田警部補)・・・・・・・・・


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